日本服薬支援研究会

簡易懸濁法とは

簡易懸濁法とは、錠剤やカプセルを粉砕・開封せず、
そのまま温湯に入れ崩壊懸濁させたあと経管投与する方法です。

2001年に本方法の紹介と共に適用可能な医薬品の一覧を掲載した「内服薬 経管投与ハンドブック」が発売されて以来、多くの施設で簡易懸濁法は実施されてきました。さらに2006年4月に改定された「第十二改定 調剤指針 」にも「簡易懸濁法」として項目が追加され、現在広く認知・実施されるまでになりました。

簡易懸濁法実施例(倉田式経管投与法Ver.1)

簡易懸濁法実施例(倉田式経管投与法Ver.1)の方法

簡易懸濁法実施例(倉田式経管投与法Ver.2)

簡易懸濁法実施例(倉田式経管投与法Ver.2)の方法

注入器:
Exacta-Med オーラルディスペンサー(Baxa社) 自立式チップキャップ付
三方活栓:
経口用ストップコック付三方活栓(Baxa社)
Baxa社連絡先(株)ユヤマ(TEL:03-5628-1461)
水剤瓶:
連絡先(株)シンリョウ(TEL:0120-7-11296)

簡易懸濁法と粉砕法の比較と、そのメリット

簡易懸濁法はこれまで経管投与の際に繁用されてきた粉砕法(いわゆる「つぶし調剤」)に伴う調剤時の問題点(表1)を回避すると共に、多くのメリット(表2)を持っています。

表1.調剤時の問題に対する粉砕法と簡易懸濁法との比較
×:問題あり    ○:問題なし    △:多少問題あり
調剤時の問題点 粉砕法 簡易懸濁法
錠剤粉砕
カプセル開封
錠剤のまま
カプセルのまま
コーティング破壊
カプセル開封
1 物理化学的安定性への
影響
1-1光の影響 ×
1-2温度・湿度の影響 ×
1-3色調変化 ×
2 薬物動態、薬効・副作用
への影響
2-1腸溶性、徐放性の破壊※1 × × ×
2-2吸収・バイオアベイラビリティ
の変化※1
× ×
3 感覚器への影響 3-1味、臭いの影響※2
3-2刺激感、しびれ感、収斂性※2
4 調剤上の問題 4-1粉砕、分割分包によるロス ×
4-2混和、混合による配合変化 ×
4-3他患者薬へのコンタミネーション ×
5 調剤者への影響 接触、吸入による健康被害 ×
6 調剤業務 6-1煩雑化 ×
6-2調剤時間増大 ×
6-3調剤過誤の発見 ×

※1:インタビューフォーム調査により、可能性のある薬品を除外することで回避可能
※2:経口投与ではないため影響はない

表2 簡易懸濁法のメリット
1 調剤時問題点の解決
2 投与時の問題、経管栄養チューブ閉塞の回避
3 配合変化の危険性の減少
粉砕法:粉砕して配合したあと投与日数期間、配合変化の危険性がある。
簡易懸濁法:投与前水に入れる10分間のみ
4 投与可能薬品の増加
錠剤・カプセル剤全1,003薬品中
→粉砕法:694薬品(69%)
→簡易懸濁法:850薬品(85%)
5 投与時に再確認ができる→リスクの回避
6 中止・変更の対応が容易→経済的ロスの削減
7 細いチューブの使用可能→患者QOLの向上
【参考図書・文献】
「内服薬 経管投与ハンドブック 第2版」(監修:藤島一郎、執筆:倉田なおみ)、じほう(2006)
「月刊薬事2007年3月(Vol.49/No.3)特集:医療現場に広がる簡易懸濁法」、じほう(2007)